【重要】事業承継の構成要素(資産の承継)

資産の承継とは、事業を行うために必要な資産(設備や不動産などの事業用資産、債権、債務であり、株式会社であれば会社所有の事業用資産を包含する自社株式である。)の承継を指します。

会社形態であれば、会社保有の資産の価値は株式に包含されるので、株式の承継が基本となります。

他方、個人事業主の場合は、機械設備や不動産等の事業用資産を現経営者個人が所有していることが多いため、個々の資産を承継する必要があります。

また、株式・事業用資産を贈与・相続により承継する場合、資産の状況によっては多額の贈与税・相続税が発生することがあります。

後継者に資金力がなければ、税負担を回避するために株式・事業用資産を分散して承継し、事業承継後の経営の安定が危ぶまれる等の可能性もあります。

そのため税負担に配慮した承継方法を検討しなければなりません。

さらに、例えば親族内承継においては株式・事業用資産以外の個人財産の承継や他の推定相続人との関係も視野に入れる必要があり、また類型にかかわらず、現経営者個人の負債や保証関係の整理・承継を行う必要があるなど、資産の承継に際して考慮すべきポイントは専門的かつ多岐にわたります。

そのため、資産の承継に向けた準備に着手する段階で、早期に事業承継の専門家に相談することが有益である。

事業承継の構成要素(人(経営)の承継)

人(経営)の承継とは、後継者への経営権の承継を指します。会社形態であれば代表取締役の交代、個人事業主であれば現経営者の廃業・後継者の開業によるものになります。現経営者が維持・成長させてきた事業を誰の手に委ねるべきか、適切な後継者の選定は事業承継の成否を決する極めて重要な問題となります。
特に、中小企業においてはノウハウや取引関係等が経営者個人に集中していることが多いため、事業の円滑な運営や業績が経営者の資質に大きく左右される傾向があります。
親族内承継や従業員承継において、後継者候補を選定し、経営に必要な能力を身につけさせ、保有する知的資産を含めて引き継いでいくには5 年から10 年以上の準備期間が必要とされ、これらの取組に十分な時間を割くためにも、後継者候補の選定は出来るだけ早期に開始すべきです。
また、近年は親族の中から後継者候補を見つけることが困難な企業も増加しており、会社や事業の社外への引継ぎ(M&A等)が、事業承継の有力な選択肢の一つとして認識されてきています。事業承継の検討に際しては親族内・従業員承継に向けて後継者の選定を行うだけでなく、状況によってはM&A等による外部の第三者への事業承継の可能性も視野に入れて検討を進めるべきといえます。

事業承継の構成要素

事業承継は単に「株式の承継」+「代表者の交代」と考えられることがあり、事業承継対策といっても、例えば親族内承継であれば一時的に利益を減らして株価を下げて贈与すればよい、M&Aであれば株価の評価を高め売却益を確保すれば良いといった手法の議論に終始してしまう傾向があることが指摘されています。しかし、事業承継とは文字通り「事業」そのものを「承継」する取組であり、事業承継後に後継者が安定した経営を行うためには、現経営者が培ってきたあらゆる経営資源を承継する必要があります。後継者に承継すべき経営資源は多岐にわたるが、下図のとおり「人(経営)」、「資産」、「知的資産」の3 要素に大別されます。

(事業承継ガイドラインより)

事業承継の類型(社外への引継ぎ(M&A等)

株式譲渡やM&A等により承継を行う方法です。親族や社内に適任者がいない場合でも、広く候補者を外部に求めることができ、また、現経営者は会社売却の利益を得ることができる等のメリットがあります。
M&A等を活用して事業承継を行う事例は、中小企業における後継者確保の困難化等の影響も受け、近年増加傾向にあります。
山梨県は親族内や従業員承継が難しい場合、都心部から離れていることも有り、外部から後継者を得ることも難しいことから、最終的にはM&Aを選択する可能性は高いと言えます。

後継者難のほか、中小企業のM&A等を専門に扱う民間仲介業者等が増えてきたことや、国の事業引継ぎ支援センターが全国に設置されたことからM&A等の認知が高まったことも一因となっているものと考えられます。

社外への引継ぎを成功させるためには、
・本業の強化
・内部統制(ガバナンス)体制の構築
などにより企業価値を十分に高めておく必要があります。
そのため、現経営者にはできるだけ早期に専門家(事業承継士など)に相談を行い、企業価値の向上(磨き上げ)に着手することが望まれます。
M&A等によって最適なマッチング候補を見つけるまでの期間は、M&A対象企業の特性や時々の経済環境等に大きく左右され、数ヶ月~数年と大きな幅があることが一般的です。相手が見つかった後も数度のトップ面談等の交渉を経て、最終的に相手側との合意がなされなければM&A等は成立しません。このため、M&A等を実施する場合は、十分な時間的余裕をもって臨むことが大切といわれています。

事業承継の類型(役員・従業員承継)

「親族以外」の役員・従業員に承継する方法です。
・経営者としての能力のある人材を見極めて承継することができること
・社内で長期間働いてきた従業員であれば経営方針等の一貫性を保ちやすい
といったメリットがあります。
親族内承継の減少を補うように、従業員承継の割合は近年、急増しています。これまで従業員承継における大きな課題であった資金力問題については、
・種類株式への変更
・持株会社の設立
・従業員持株会を活用するスキーム
・親族外の後継者も事業承継税制の対象に加えられたこと
等も相まって、より実施しやすい環境が整いつつあります。
また、従業員承継を行う場合の重要なポイントとして、
・親族株主の了解を得ること
が挙げられます。
現経営者のリーダーシップのもとで早期に親族間の調整を行い、関係者全員の同意と協力を取り付け、事後に紛争が生じないようしっかりと道筋を付けておくことが大切</strong>である。

事業承継の類型(親族内承継)

現経営者の子をはじめとした親族に承継させる方法である。一般的に他の方法と比べて、
・内外の関係者から心情的に受け入れられやすい
・後継者の早期決定により長期の準備期間の確保が可能である
・相続等により財産や株式を後継者に移転できるため所有と経営の一体的な承継が期待できる

といったメリットがあります。
しかし、事業承継全体に占める親族内承継の割合が急激に落ち込んでいます。理由は、子どもがいる場合であっても、
・事業の将来性や経営の安定性等に対する不安の高まり
・家業にとらわれない職業の選択
・リスクの少ない安定した生活の追求等
子ども側の多様な価値観の影響も少なからず関係しています

これまで、親族内承継においては相続税対策のみを行えば足りるかのように
捉えられてきましたが、現下の中小企業の経営環境を踏まえると、後継者は、
・引き継ぐこととなる事業はどのような状況にあるのか
・将来に向けて継続していくための準備が行われているか
・準備を進められる状況にあるのか等
に関心があります。
言い換えると、後継者にとって「引き継ぐに値する企業であるか」を現経営者は問われているということを認識する必要があります。
その意味で、現経営者は、事業承継を行う前に、
・経営力の向上に努め
・経営基盤を強化する
ことにより、後継者が安心して引き継ぐことができる経営状態まで引き上げることが求められているのです。
また、事業承継を円滑に進めるためには、
・現経営者が自らの引退時期を定め
・後継者の育成に必要な期間を逆算し
・十分な準備期間を設けて
・後継者教育(技術やノウハウ、営業基盤の引継ぎを含む)取り組む
ことが大切といえます。

事業承継ネットワークの役割

事業承継には明確な期限がないことから、健康上の問題等がなければ、日々の多忙さに紛れ、対応を後回しにしてしまうことはやむを得ない側面もあります。しかし、経営者の交代があった中小企業において、交代のなかった中小企業よりも経常利益率が高いとの報告もあり、事業承継を円滑に行うことができれば事業の成長の契機となる。その反面、失敗すれば事業の継続自体も危ぶまれる可能性がある。このことから、中小企業経営者が、自身の経営者としての責任において向き合わざるを得ない課題が事業承継なのである。そこで、身近に相談できる者がおらず悩んでいる経営者や、日々の業務に追われ、セミナーや相談窓口を訪問するための十分な時間をとれない経営者に対しては、身近な支援機関等が日々のつながりの中で、事業の将来を見据えた積極的な対話を通して、事業承継に向けた早期・計画的な取組を促すことが大切である。

ここに当事業承継ネットワークにご連絡いただければ、すぐにお伺いしてご事情をお伺いいたします。

【重要】中小企業における事業承継の現状

(1)後継者確保の困難化
約4000社の企業のうち60歳以上の経営者の約半数が廃業を予定しており、その廃業理由は「当初から自分の代限りで辞めようと考えていた」(38.2%)、「事業に将来性がない」(27.9%)、「子供に継ぐ意志がない」「子供がいない」「適当な後継者が見つからない」といった後継者難を挙げる経営者が合計で28.6%に達しました。この背景には、近年の息子・娘の職業選択の自由をより尊重する考え方の広がりや、足下の業績から予測される自社の将来性が不透明であること等、事業承継に伴うリスクに対する不安の増大等の事情があると指摘されています。なお、廃業予定の約3割が、同業よりも良い業績を上げており、約4割の経営者が今後10年間、業績の現状維持は可能と回答しています。

(2)親族外承継の増加
近年、親族内承継の割合の減少と親族外承継の割合の増加が生じています。経営者在任期間が35年以上40年未満の層では9割以上が親族内承継であると回答していますが、在任期間が短い経営者層では、直近5年間で親族内承継の割合が全体の約35%にまで減少し、親族外承継が65%以上に達しているとの結果が示されています。

(3)早期取組の重要性
円滑な事業承継を実現するためには、早期に事業承継の計画を立て、後継者確保を含む準備に着手することが不可欠です。現に、中小企業経営者の高齢化が進んでいる状況の中、実際に準備に着手している企業は70 代、80 代の経営者ですら半数に満たない状況です。後継者の育成期間も含めれば、事業承継の準備には5 年~10年程度を要することから、平均引退年齢が70 歳前後であることを踏まえると、60歳頃には事業承継に向けた準備に着手する必要がある。

中小企業の事業承継を取り巻く現状

(1)中小企業の重要性
日本の中小企業は我が国企業数の約99%(小規模事業者は約85%)、従業員数の約70%(小規模事業者は約24%)を占めており、地域経済・社会を支える存在として、また雇用の受け皿として極めて重要な役割を担っています。

(2)中小企業の現状と経営者の高齢化
「中小企業白書(2016年版)」によれば、中小企業の数は、1999 年から2015 年までの15年間に約100万社減少しています。経営者交代率も長期にわたり下落傾向にあり、多くの企業において経営者の交代が起こっていません。その結果、1995年頃には47歳前後であった経営者年齢のボリュームゾーンも2015年には66歳前後になっています。中小企業経営者の引退年齢は規模や企業の状況にもよるが平均では67~70歳程度であるため、今後5年程度で多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えることが想定されます。このような状況を踏まえると、中小企業の活力の維持・向上のため、事業承継の円滑化に向けた取組は中小企業経営者や支援機関、国・自治体等、すべての当事者にとって喫緊の課題であると言えます。